今回はITエンジニアの年収事情について迫っていきたいと思います。
・ITエンジニアの中でも年収が高い職種って何?
・ITエンジニアで年収を上げていくにはどうすればいいの?
ITエンジニアの平均年収
こちらの求人サイトを参照するとITエンジニアの平均年収は485万円と算出されています。
総務省が毎年実施している家計調査によると、2022年の労働者の平均年収は約420万円となっているので、ITエンジニアの平均年収は日本の平均年収よりも高いことがわかります。
ただ、当然のことではありますが、ITエンジニアの中でも年代や職種によって平均年収は異なります。
ITエンジニアは専門性の高い職種であることもあり、業務経験が豊富な40〜50代で、多くの作業者を動かすことができる、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーで年収が高くなっています。
ITエンジニアの年収が低いと言われる理由
日本の平均年収よりも年収が高いITエンジニアですが、年収が低いという噂があるのはなぜなのでしょうか。
以下でその理由を見ていきたいと思います。
労働時間が長い
多くのIT企業は、ITシステムを作成したいお客様と契約することで売り上げを上げています。
契約の際にはITシステムの仕様を明確にした上で、システム開発に要する工数で合意する必要があります。
工数とは、ITシステムを作成するために要する稼働のことで人月(にんげつ)という単位で表されます。(1人1月の労働力を1人月と表現します。)
契約時に定めた工数に収まるようにシステム開発を行うことができないとITシステムを開発したとしてもIT企業は赤字になってしまいます。そのため、昔はサービス残業で、足りない工数の埋め合わせを行うということが横行していました。サービス残業を行うと、労働時間に対する年収は低くなるため、ITエンジニアは年収が低いといわれているのだと思われます。(昨今では労働環境が改善され、サービス残業は無くなってきています。)
また、ITエンジニアに限った話ではありませんが、管理職クラスの社員は裁量労働制(給与が決められており、残業時間が発生しない勤務形態)で働いていることが多いため、システム障害など想定外の事象が起きた際に、勤務時間が伸びて時間当たりの年収は低くなります。
こういった勤務形態もITエンジニアは年収が低いといわれている原因の一つといえるでしょう。
スキルアップがしづらい
ITエンジニアは専門性の高い仕事ですが、職場によっては単純作業を行うことに時間を取られ、スキルアップがしづらいことがあります。特に運用・保守系の作業は誤操作によるトラブルを防止するために、事前作成された手順通りに行うことが求められるので単純作業が多くなります。
ITエンジニアは労働時間も長い傾向があるので、平日の仕事終わりに時間を確保するか、休日を活用しなければ新たなスキルを身につけるのは困難です。また、スキルを新たに身につけたとしても、それを活かせる案件に巡り合えず、実践的な経験を積むことができない可能性も多分にあります。
業界特性
IT業界では、お客様から案件を受注した元請けの企業が下請け、孫請けの企業と協業してシステム開発を行います。当然のことながら、元請けの企業の利益が一番大きくなり、下請けの企業になればなるほど利益は小さくなります。
年収は企業の利益の大きさに比例して高くなるため、下請けの企業の社員は作業量に見合った年収を得られないと感じることも多いでしょう。ITエンジニアは大多数が下請け、孫請けの企業に所属しているため、年収が低いという声が多く聞かれるのだと思われます。
給与体系
IT企業に限らずですが、日系の企業では年功序列の給与体系となっていることが多く、個人のスキルが評価に反映されづらいことも年収が低いといわれる理由の一つです。
スキルアップしても年収が上がらなければ、学習意欲が削がれ、さらに年収が上がりづらくなるといった悪循環に陥ってしまいます。
昨今ではスキルを評価するような人事制度に改定する企業も増えてきてはいますが、実態としては未だに年功序列の風土が強く残っています。外資系の企業では成果報酬型の給与体系となっている企業もあるのでスキルに見合った年収を得たいのであれば、転職を検討してみてもよいかもしれません。
ITエンジニアとして年収を上げるためには
年収が低いといわれているITエンジニアですが、年収を上げるためにはどうすればよいのでしょうか。
以下で年収をアップさせる方法をご紹介します。
スキルアップ
IT業界では日々様々な技術が研究、開発されています。特に昨今ではAI、ビッグデータ、IoTなどの分野で技術革新が著しく、これらの分野のスキルを身につければ、市場価値の高い人材となることができます。
また、流行りの分野に限らず、既存技術に関するスキルを高めていくことも重要です。
IT分野では、最新技術の導入が必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。最新技術はユーザによる使用回数が少ないため、意図しないバグが紛れ込んでいたり、関連する製品が最新技術に対応しておらず、不具合の原因になったりといったことが往々にしてあります。そのため、新たな技術を導入する際には、既存システムの実装方式を理解した上でどこに最新技術を導入すればより効果が出るかを検討する必要があります。
スキルアップというと、プログラミングスキルや各要素技術(ネットワーク・データベースなど)に関するスキルを高めていくという印象が強いですが、プロジェクトマネージャーとしてお客様折衝やプロジェクトの進捗管理、課題管理を行うこともスキルの一つです。ITエンジニアにはプログラミングが苦手な文系出身の方もいますが、その多くはプロジェクトマネージャーとして活躍しています。自分に合ったスキルを向上させていくことが年収アップへの近道だといえるでしょう。
スキルアップのためにITエンジニアにおすすめする資格を下記の記事でご紹介しているので参考にしていただければと思います。
職種の変更
ITエンジニアの中でも年収の高い職種と低い職種があります。
多くの人を動かすことができるプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーは年収が高い傾向があるので職種を変更すれば、年収の増加が期待できます。社内での異動制度を活用したり、上司に自身の意志を伝えて希望する職種で仕事ができるようにしましょう。
また、スキルアップのところでもご紹介しましたが、AI、IoT、ビッグデータなどの先進技術分野は特に人手が足りていないということもあり、年収が高い傾向があります。ただ、これらの分野に職種を変更するには、ある程度スキルが身に着いていることが前提となります。学生の方は将来性も見据えて専攻を選ぶ、社会人の方は有料の学習サービスを利用するなどして年収の高い職種に就けるようにしましょう。
転職
社内での人事制度の都合上、希望する職種に就けなかったり、スキルアップとなる経験が積めないこともあります。そんな方は、転職を考えてみると良いかもしれません。
IT業界は全体的に人手不足のため、求人を募集している企業は数多くあります。実際、筆者がお試しで転職サービスに登録してみたところ、様々な企業からスカウトが来ました。優良企業の求人は転職エージェント経由で紹介してもらえることもあるので有効活用しましょう。
独立
上級者向けの選択肢にはなりますが、フリーランスエンジニアとして独立することも年収を上げる一つの方法です。企業に所属していると、売上から企業の利益が差引かれ、給与となります。一方で、フリーランスエンジニアは売上がそのまま給与となるため、年収は高くなる傾向があります。
ただ、ITエンジニアとしての実績がなければそもそも独立することは不可能なのでまずはIT企業に就職して実績を積むようにしましょう。
フリーランスエンジニアは一案件あたりの報酬は高いですが、安定した収入が得られないというデメリットもあるのでその点は留意しておきましょう。
まとめ
・ITエンジニアは年収が低いと言われているけど、実際どうなの?
→ITエンジニアの平均年収は485万円で日本全体の平均年収420万円よりも高い水準となっています。
・ITエンジニアの中でも年収が高い職種って何?
→ITエンジニアの中では多くの要員を動かすことが可能なプロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダーとAI、IoT、ビッグデータなどの先進技術を専門とするエンジニアの年収が高い傾向があります。
・ITエンジニアで年収を上げていくにはどうすればいいの?
→スキルアップ、職種の変更、転職、独立が年収を上げるための方法となります。